2007年02月04日

ドイツにおけるマンガ(4):「推奨年齢16歳以上」?

 (3)で触れた通り、ドイツではNARUTOやワンピースと並んで《ふたりエッチ》がそこかしこで売られている。現在のところ日本では33巻まで出ているが、このうち31巻までがドイツでも翻訳・販売されている。加えて、for Ladiesも2巻まで翻訳・販売されている。さて、そんな本作品の表紙には、次のように書かれた赤いステッカーが貼られている。

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 Empfohlen ab 16

 ここで「Empfohlen」というのは「推奨される」といった意味で、「16」というのは「16歳」という年齢を指すものと思われる。つまり、このステッカーが言わんとするのは「16歳以上推奨」または(「推奨」という言葉が積極的・肯定的すぎるニュアンスを出してしまうようであれば)「対象年齢16歳以上」、ということであろう。

 ここで直ちに想起されるのは、日本で一部雑誌・マンガに付されている、18歳未満購入禁止を意味する「成人コミック」マークである。この種のマークは、その雑誌やマンガに含まれる表現(実際には主に性表現)が青少年に与える影響を考慮して付されているものだが、おそらく「Empfohlen〜」ステッカーも《ふたりエッチ》の性表現に鑑みて付されているのだろう。ここで年齢が日本と異なり「16歳」となっているのは、ドイツで施行されている青少年保護法(Jugendschutzgesetz)において日本でいう「18歳」に相当する「成人」が16歳に設定されていることと、平仄を合わせたものであろう。

 では、こうしたステッカーによる「推奨年齢」「対象年齢」表示は、どのくらい強い意味を持っているのだろうか。上述のようにドイツでは連邦レベルで青少年保護法制が整備されている一方で、各種メディアに関する自主規制が組織的に行われており、例えば映画やビデオ・DVDにおいてはその自主規制活動が青少年保護法制に基づく措置と連動している。そうしたことから、「もしかすると既にMangaについても何らかの自主規制組織が存在して年齢指定を行っており、しかもそれが法的効力を持っているのだろうか?」などと思われたのである。

 というわけで、ベルリンの専門店GROBER UNFUGの店員に、思い切ってこのへんの事情を聞いてみた。カタコトだけどな

 店員の話によると、基本的に、このステッカーは当該商品を出版している出版社が、全く自主的につけているそうである。現在に至るまでMangaが青少年保護法制に照らして当局から何らかの指導なり処分を受けた事件はないし、Mangaを翻訳・出版している出版社が自主規制の組織やガイドラインを形成しているわけでもない。だから、ステッカーを貼るにあたっても、法令や業界組織による基準に照らして判断しているわけではないし、また外部からの求めに応じて貼付しているわけでもない。

 また、ステッカーの意味も「〜〜歳未満の方には販売しません」といった強いものではなく、「〜〜歳以上になってから読むことをお薦めします」という程度にすぎない。その意味では、客に対する情報提供/アドバイスの一種とも言える。店員によれば、例えばヒップホップのCDにくっついているADVISORYマーク(参考)と同じような意味合いだという。

 このような「推奨年齢」「対象年齢」表示は、もちろん、《ふたりエッチ》だけに為されているわけではない。上記の話を聞いたGROBER UNFUGで他のMangaの表紙・裏表紙を改めて見ると、他にも同旨とみられる表示がある。

 例えば、《ふたりエッチ》同様のステッカーは《天上天下》や、一部少女マンガ(筆者は不勉強なので元タイトルを知らないが、男性どうしの性行為を思わせる描写がそこには含まれていた)にも貼付されていた。

 また、個別の作品にステッカーを貼付するのではなく、統一的な形式に基づいて(同じ出版社から出されている)すべての作品に表示を行う場合がある。例えばTOKYOPOPから出版されているMangaは、見かけたものは全て、裏表紙の上部にジャンルと対象年齢を示す表示が存在する。《DEATH NOTE》であれば「Krimi/Mystery 15+」、《苺ましまろ》であれば「Comedy 13+」、といった具合に。なるほど、こうしてみると、「販売禁止」という強いものではなく、オモチャの「対象年齢」のようなソフトなものだ、というのも納得である。

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* 推奨年齢表示の例。上がDEATH NOTE、下が苺ましまろ。(クリックで拡大)

 もちろん、こうしたソフトな「推奨年齢」「対象年齢」表示であっても、それがもたらす社会的影響は様々であり、一概にそれがプラスの効果をもたらしているわけではないだろうし、まして、同じ制度を日本に導入すべきだと言うつもりもない。ただ、含まれている表現の方向性や程度に応じてそのような表示を行っておき、読み手やその保護者による判断に委ねることは、表現物に関する青少年保護の1つのありかただと思うし、少なくとも法令による頭ごなしの指定・制約よりも遥かに柔軟性のある手段であるとも思う。

 などという、ドイツのManga業界のちょっと真摯な実情に触れて、真面目なことを少し考えたりもした。もちろん、《ふたりエッチ》は買ったよ
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2007年02月03日

ドイツにおけるマンガ(3):品揃えは、どうなっているのか?

 では、Mangaが販売されているそれぞれの場所で、品揃えはどうなっているのだろうか。先の記事の分類でいえば、専門店が相当の充実度であるのは当然のことだが、一般書店や駅売店も見過ごせない充実度である。

 一般書店でも駅売店でも、例えばNARUTOやワンピース等の(現地でも)人気作品は半分以上の巻が置いてあるし、それに加えて一騎当千やローゼンメイデン等のややマニアックな作品群も当たり前に陳列されている(但し、こちらは最新刊だけ、という場合もあるが)。とくに駅売店の品揃えは、日本の駅のコンビニやキオスクでは最新刊と若干の廉価版が置いてあるだけなのに対して、いわば「本国」を凌駕していると言ってもよい。

 ところで、駅売店で売られているMangaのセレクションについて、筆者には気になることがある。このような場所では、通勤客や旅行客を含めマンガに余り入れ込んでいない客にも、しかも限定された面積で商売をせねばならない以上、陳列する作品にも自然としぼりがかかって来ようはずである。事実、常に置かれているのは、NARUTOやワンピースといった(現地でも有名な?)作品である。

 しかしここでもう1つ、ほとんどのキオスクで全巻が売られているマンガがある:《ふたりエッチ》である[ドイツ語版の表題は「THE MANGA LOVE STORY」]。毎回毎回読者にナイトライフの技法を啓蒙し続けるこのマンガが、そもそもドイツで訳されているというのが驚きだが、それがどういうわけか、どこのキオスクにも陳列されている。しかも全巻NARUTOとかと同じ棚で

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* ゲッチンゲン中央駅のキオスクにて撮影。NARUTOの隣にふたりエッチ。(クリックで拡大)

 一体、ドイツ人は何を思って《ふたりエッチ》をそこまでプッシュするのだろうか。エロ本と同じ感覚で読む人でもいるのかと思ったが、そういう様子もない。ともかく、どこのキオスクでも売られていて、めくるたびに、主人公の若夫婦があの手この手で馬鍬っている。その理由は結局、旅行が終わるまで分からなかったが、ゆるぎない印象が私の中に残っている。

 ドイツは今、確実に、始まっていると思う。
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2007年02月02日

ドイツにおけるマンガ(2):どこで、いくらで、売っているのか?

 次に、こうして「垂れ流し」的に翻訳されているマンガ=Mangaが、具体的にどのような場所で、どれくらいの価格で売られているのか、について書いておきたい。

A:どこで?

 第1に場所について。基本的には日本と同じような感じである。一般書店には「Manga」コーナーが設けられているし、数はさすがに日本には劣るが専門店もあるし、また駅構内にある売店でも販売されている。

 第1に、一般書店について。全ての、とは言わないけれども、そこそこの規模の書店であれば、必ずMangaのコーナーが設けられている。筆者が実際に行った中では、例えばフランクフルトおよびベルリンのHugendubelやボンのBouvir、またベルリンのDussmannにはそういったコーナーが設けられていた。しかも、アメコミ等と日本のマンガはジャンル自体が違うと認識されているのか、多くの場合、前者は「COMIC」・後者は「MANGA」という括りになっている。

 第2に、駅のキオスク。別の箇所でも触れる予定だが、ドイツの主要な鉄道駅には必ず「Presse&Bücher」と言った名称の、新聞・雑誌・書籍を扱う売店がある。そして、そのようなキオスクは必ずといって良いほど、Mangaを取り扱っている。しかも分量の点でも、申し訳程度に置いてあるというレベルではなく、回転式の陳列棚なども使いながら100~200冊程度が陳列されている。また、場所によってはショーウィンドーがあるのだが、おそらく現地で出版業務を行っている企業によって、等身大ポップなどの宣伝が行われていることもあった(筆者はボン中央駅およびベルリンのAlexanderplatz駅で目撃している)。

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* ハイデルベルク中央駅のキオスク。中央やや左にある赤い回転式書架にMangaが陳列されている。ちなみに下から4段目の赤い背表紙はHELLSING。

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* ボン中央駅のキオスクのショーウィンドー[クリックで拡大]

 第3に、Manga専門店。こちらのサイトでも紹介されているように、ドイツにもマンガやゲームを扱う専門店はある。筆者が立ち寄ったのは、フランクフルトのCOMIC、およびベルリンのGROBER UNFUGの2件。
 このうち前者は、フランクフルトの中心街ハウプトヴァッヘをやや南に外れた辺りにある2階建ての店で、売場面積は合計でアニメイト秋葉原の1階分程度である。店舗の1階は主にアメコミとその流れを汲む作品が中心であるのに対して、2階はMangaコーナーで、立ち読みならぬ「座り読み」をしてもらうために数個の椅子が用意されている。
 これに対して後者は、ベルリンのWeinmeisterstrasse駅(U-Bahn)付近に位置しており、売場は1階のみで、面積は同じくアニメイト秋葉原店の1階分程度。こちらはMangaを中心としたホビーショップの趣きがあって、アニメのDVD(日本版含む)や日本の音楽雑誌なども売られていた。そういえば、浜崎あゆみのポスターも飾られていたよ

B:いくらで?

 第2に価格について。既に指摘されているように、海外におけるMangaは日本におけるよりも割高である(現地の金銭感覚は厳密には分からないが、少なくとも日本円に換算した場合、日本版の価格よりも高い)。

 ドイツにおいてもこの事情は同じで、日本でマンガを買うのと同じ感覚では難しい価格設定がなされている。出版社によっても作品によっても差異はあるが、例えば日本でいう少年・少女マンガを主に扱っているEGMONTやTOKYOPOPの場合、大半の作品が5〜6.5ユーロくらいで販売されている。また日本でいう「大人コミック」を主に扱っているPANINICOMICSの場合は、7〜8ユーロくらいのものが大半である。

 これを単純に日本円に換算すると、1ユーロを150円として、前者がおよそ750〜1000円、後者がおよそ1100円〜1200円、ということになる。つまり、日本の2倍前後なのである。総じてドイツの書籍は日本に比して割高な印象があるが、それにしても2倍というのは高額である。

 しかも、以前の旅行でイタリアで購入したMangaは、例えばエクセル・サーガがおよそ4ユーロ、ちょびっツやラーゼフォンがおよそ3ユーロという具合に、全体としてドイツよりも安価だったのである。

 このようにMangaが高価になる理由は定かではないが、著作権や翻訳の手間などが関係しているのだろうか。また一つには、日本におけるほど大量には製作しないために、単価が上がっているのか、とも思う。

 現地では、日本のようにごく普通の子供がMangaに飛びついて買っていく風景を余り見かけず、むしろ大学生以上の、しかもそれなりに金を持っていそうな人ばかりがMangaを物色していたのだが、もしかするとそれはこうした価格に関する事情と関係しているのかもしれない。
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2007年02月01日

ドイツにおけるマンガ(1):何が「輸出」されているのか?

 旅行中最も驚かされたのは、ドイツにおけるManga(周知のことだろうが、日本のマンガを現地ではこのように言う)の浸透度である。欧米で日本のマンガやアニメが人気だという話は既に有名だし、以前の旅行でもイタリアで現地語訳された日本のマンガを買いあさった記憶がある。が、そんな筆者にとっても、ドイツにおける浸透度は「異常」としかいえない。あの国どうかしてるぜ、マジで。

 というわけで、独立のカテゴリを設けて、筆者が見聞きした限りでのドイツのManga事情らしきものを紹介しておきたい。あくまで、一つの切片にすぎないけれども。

 まず、端的に、どのくらい/どういうマンガが翻訳・出版されているのか。端的に言って、何でも訳されている。それはもはや「垂れ流し」と言ってもよい。「何でこんなものまで翻訳するんだよ」と言いたくなるような品揃えである。以下、筆者が現物を見かけたものを列挙してみる(あくまで一例として!):

ドラゴンボール、NARUTO、ワンピース、HUNTER×HUNTER、DEATH NOTE、クロマティ高校、コナン、MAR、NANA、CLAMP学園探偵団、まほろまてぃっく、ヘルシング、ローゼンメイデン、一騎当千、苺ましまろ、ゆびさきミルクティー、エマ、GUNSLINGER GIRL、ふたりエッチ、ベルセルク、フルメタル・パニック、ふしぎ遊戯

 また、現物は確認しなかったが、購入したマンガの巻末に掲載されているリストにも、例えば以下のような気になる作品の名前があった

フルメタル・パニック、KIRARA、ヘルシング(アニメコミック版)、天上天下、藍より青し、xxxHOLiC

 …という状況である。このほか、筆者は具体的に作品名を知らないが、少女マンガも大量に翻訳されていた。上記のリストからも分かってもらえるとは思うが、特定のジャンルや媒体、傾向の作品が特に訳されているわけではなく、日本である程度名の通っている作品は(というか「通好み」の作品までもが)、かなりの率で翻訳されている。

 ちなみに、DEATH NOTEは4巻までしか訳されていないが、まほろまてぃっくは全巻訳されている。藍青も全巻訳されている。苺ましまろは(惜しいことに?)まだ1巻しか訳されていないようだ。

 なお、以下に現地でMangaを出版している代表的な企業のサイトへのリンクを張っておく。それらに掲載された刊行物リストを見ると、本記事に紹介されていない驚くべき「現状」が分かるだろう。

 ・PaniniComics.de
 ・TOKYOPOP
 ・Egmont:MangaNet
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